マルコ・ペッツートは、ピエモンテ州ロエロで育った次世代の造り手です。彼が目指すのは、土地の複雑さを映しながらも、親しみやすく、自然と心が弾むようなワイン。その味わいには、ロエロらしい明るさと、細部まで考え抜かれた知性が共存しています。若くして畑に魅了され、醸造学校で学んだ後、ロエロやランゲのワイナリーで経験を積みました。2017年には一度醸造の現場を離れ、養蜂家として独立。数百の蜂の群れを季節ごとにピエモンテ各地へ移動させ、冬にはリグーリアや時にトスカーナ・マレンマへも連れていきながら、土地の健全さと生態系の循環を体感してきました。その経験が、土壌を生かす有機的な畑作りと、自らの名を冠したワイン造りへとつながっています。
2018年に植樹した畑から2021年に初ヴィンテージをリリースし、1950年や1980年植樹の古木区画も加えながら、ロエロという土地そのものを誠実に表現しています。祖父の家の地下カンティーナで、過度な抽出を避け、繊細で明るさのある味わいを追求。テロワールとは土壌や気候だけでなく「畑とセラーに立つ人間」も含むものだと彼は語ります。
さらに各キュヴェのラベルにも、マルコの人生と土地への想いが刻まれています。アルネイスのラベル前面に描かれた蜂は、彼のもう一つの人生そのもの。ネッビオーロのラベルに描かれたウニの化石は、堆肥を埋めるために畝を掘っていた際、活力の弱い区画から数多く現れたものです。数百万年前、この地が海であった証であり、現在は若いネッビオーロの根がその化石層へと伸びています。それはロエロの中でも、砂の割合が平均より少なく、青色の粘土層(ルガニャーノ粘土)が見られる古い地層にのみ現れるもので、土地の成り立ちを物語る象徴的な存在です。
そしてアコーディオンを奏でる人物は、歌声が丘に響いていたロエロの農民文化へのオマージュ。祖父が語ってくれた、隣り合う畑で働く人々が自然と歌い始め、その声が丘を越えて響き合ったという記憶を今に伝えています。マルコ自身も今なお仲間と古い民謡を歌い、良いワインを囲みながら、その精神を受け継いでいます。